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かつては日常の一部だった読書が、今では「特別な時間」になってしまった。その違和感の正体を探るように、本書『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』を手に取った。読書ができなくなる理由を「忙しさ」や「疲れ」だけでなく、社会構造や働き方の価値観にまで踏み込んで分析している。特に印象的だったのは、「読書とは寄り道である」という視点だ。効率や成果が求められる現代社会では、寄り道や余白が排除されがちだが、読書はまさにその「余白」に根ざした行為である。だからこそ、全身全霊で働く社会では読書が成立しにくくなるのだ。
また、「半身で働く」という提案には深く共感した。仕事にすべてを捧げるのではなく、自分の時間や趣味を大切にする働き方は、読書だけでなく人生そのものを豊かにする。読書は単なる娯楽ではなく、自分自身と向き合い、他者の視点を知るための手段でもある。著者が引用する映画『花束みたいな恋をした』のように、文化的な趣味が失われていく過程には、切なさと危機感を覚える。
この本を通じて、読書ができないことに対する罪悪感が少し和らいだ。読めないのは自分のせいではなく、社会の仕組みがそうさせているのだと知ることで、読書への向き合い方が変わった。今後は「寄り道」を意識的に取り入れ、読書の時間を取り戻していきたい。












