眩しいほどの青空に、風に吹かれて踊る子どもの洋服。この表紙が印象的で手に取りました。
児童養護施設にいる子どもたちに焦点を当てたストーリーで、目次には主題のあとにキャラクター視点の副題が並んでいます。
主人公・三田村は児童養護施設に転職して早々、子どもたちに同情し、お節介を焼いてしまいます。
その優しさを常に与えられるのでなければ、むやみやたらに親切心を振りまいてはいけないと、同僚の和泉にぴしゃりと言われてしまう始末。
そんな和泉と三田村は、なんとコンビを組むことになるのです。
気が強く頑なで冷徹な和泉に対して、三田村は素人同然……
この凸凹コンビ。一体どんな相乗効果を生み出すのか?
物語のカギになるのは「問題のない子供」のひとり、谷村奏子。
三田村は彼女の前で、自分が児童養護施設の子どもたちを可哀想だと思っている、と打ち明けてしまうのです。
彼女がどんな心境でこの発言を聞いていたのか。それは計り知れません。
自分の力ではどうにもならないことを勝手に枠にはめられて、憤慨する彼女の気持ちが痛いほど伝わり、心動かされました。
子どもたちの思いに触れて、着実に勝手な思い込みにも変化があらわれる三田村。
新人職員の三田村と一緒に、児童養護施設の子どもたちの秘めたる心に触れればきっと、あなたも胸を打たれることでしょう。