会社で精神が追い詰められ、無意識にも人生を終えようとするところまで行ってしまった主人公、青山を止めた謎の男、「ヤマモト」との関係や青山の会社や生活の変化を深い心理描写で描かれている1冊。
【ストーリー】
誰もが抱え込んでいる生き辛さに向き合ったストーリーだと思います。
最後の最後まで鬱々とした展開が続くものの、ラストがそれを吹き飛ばしてくれる展開となっています。
【読みやすさ】
「ヤマモト」は大阪弁で、抵抗を覚える方もいらっしゃるかと思いますが、文章の書き方が簡潔・丁寧、「ヤマモト」の一人称視点という展開がなく、基本的には主人公である「青山」の一人称視点で進むため、強い違和感は感じられないかと思います。
また、難しい単語も使われることなく、それでいて「青山」の心情が痛いほどに分かる文章になっています。
三人称視点に疲れてしまった、人の感情をダイレクトに感じたい、というときには最適だと思います。
【文字数】
多すぎず少なすぎず。ただ、謎の男、「ヤマモト」のことは最後にはきちんと明かされるものの、情報が薄くなっているようでした。心理描写に文字数を使いすぎて一つ一つの行動に文字数をかけすぎたのかなと思います。
【総評】
文章に癖がなく、心理描写の深い一人称視点、クオリティの高い小説でした。
物語の運びや起承転結もスムーズ、登場人物も少ないのでさらっと読める(メンタルは少し覚悟が必要かもしれませんが)1冊でした。
鬱々とした展開で読む手を止めない方でしたらオススメです。