【人は驚くほど、人の痛みに無自覚なのだ】
傷にまつわる10篇の短編集。見えている傷と見えない傷をめぐる物語ということでさぞ重苦しい内容かと思いきや、意外や意外、優しさや温かさに包まれる作品もあり読後感は心地よい。1つ目の『竜舌蘭』が一番好みで、一度抱えた心の傷は癒えることはなく一生抱えたまま生きていくしかない…でも見えている傷痕が自分をそっと守ってくれる時もあるのだということが描かれていて、読後色んな解釈の余地があってとても良かった。『結露』『林檎のしるし』『指の記憶』『慈雨』『あおたん』も好きだなぁ。