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この作品は極限状況における人間の心理を鋭く描いた心理小説として深く印象に残りました。佐藤まどか氏の緻密な文章力が光り、登場人物の内面の揺れ動きが手に取るように伝わってきます。「105度」というタイトルが示す状況設定が独特で、その異常な環境下で露わになる人間関係の複雑さや本性が巧妙に描かれています。特に主人公の心理描写が秀逸で、追い詰められた状況での判断や葛藤がリアルに感じられました。ストーリー展開も予想がつかず、最後まで緊張感を保ったまま読み進められます。現代社会の閉塞感や人間関係の希薄さといった問題も底流に流れており、単なるサスペンスを超えた社会派小説としての側面も感じられました。読後に深い余韻を残す、現代文学の質の高さを感じさせる作品だと思います。