『風の歌を聴け』は、「これといった事件」が何も起こらないのに、読後にはちゃんとひと夏のさびしさだけが残っている、不思議な小説だと感じました。ビールとラジオと、名前のない人たちとの会話だけで、青春の空気がここまで立ち上がるのかと驚きました。
ストーリーを追うというより、ページをめくるたびに、過ぎてしまった時間の「風圧」に頬を撫でられているような感覚になります。「完璧な文章など存在しない」という有名な一文も、若い「僕」が世界と距離をとりながら必死に何かをつかもうとしている震えとして伝わってきました。
派手さや分かりやすい感動はないのに、自分の二十歳前後のどうしようもない宙ぶらりんさを、そっと代弁してもらったような読後感でした。













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