森絵都『カラフル(文春文庫)』は、魂の入れ替わりを通して「生きる意味」を問いかける感動的な青春ファンタジーです。主人公がある事情で他人の体に入り込み、過去や葛藤を抱える人々の人生を体験することで、自分自身や周囲の人々の大切さを再発見していく物語です。軽やかで温かみのある文章ながらも、人生の選択や後悔、家族や友情の尊さについて深く考えさせられます。読後には希望とやさしさが胸に残る、森絵都ならではの心揺さぶる一冊です。
『カラフル』は、自殺した少年の体に“ホームステイ”するという奇想天外な設定から始まる物語である。死後の世界で抽選に当たった「ぼく」は、小林真という少年の人生を再体験する中で、自分自身の過去と向き合い、再生への道を探っていく。色彩を通じての感情や人間関係。たとえば、真の家庭環境には赤のような怒りや痛みが漂い、母や兄とのすれ違いが読者の胸を締めつける。一方、美術室で絵を描く時間は青のように静かで孤独だが、そこには彼の本音が滲んでいる。天使プラプラの存在は、物語に緑のような希望とユーモアをもたらす。「ホームステイだと思えばいいのです」という言葉は、人生をやり直す視点の転換を促し、真が周囲の人々と関わることで、彼の心に新しい芽が育ち始める。
終盤、「ぼく」は自分の過去の罪と向き合い、「自分を許す」ことの意味を知る。黄のような気づきと光が差し込み、世界は一色ではなく、誰もが多様な色を持っていることに気づかされる。
この一文こそ、『カラフル』の本質を象徴している。人生は単純ではなく、複雑で多様な色が混ざり合っている。本書は、そんな“カラフル”な人生を肯定し、もう一度生きてみようと思わせてくれる温かな物語である。


















