一緒に住んでいた親友を亡くし、生きる楽しみを失ってしまった主人公の桐子。年金とパートの収入だけでは生活が厳しく、心細い日々を送る彼女が、刑務所に入ることを考えるという、衝撃的な物語でした。
「人に迷惑をかけずに、長く刑務所に入っていられる犯罪は何か?」
この発想には驚きましたが、彼女が真面目に人生を歩んできたからこその発想なのだと感じました。真面目に頑張ってきた人が、先の見えない不安からこんな考えに至ってしまうのは、あまりにも悲しく、胸が締めつけられる思いでした。
桐子さんは、どこに行っても誰とでも仲良くなれる、社交的な人物として描かれているため、全体的にはユーモラスな話に仕上がっています。しかし、もしこれが偏屈で人嫌いな老人だったら、本当に犯罪に手を染め、孤独な人生の終わりを迎えていたかもしれません。
この物語は、老後の不安や孤独といった社会の暗部に触れながらも、人とのつながりの温かさを描いています。温かくも、考えさせられる一冊でした。