池波正太郎氏の代表作とも言える「鬼平犯科帳」。
時代小説や時代劇を見ることがなくとも、タイトルだけは知っているという方は多いのではないでしょうか。
2017年には「鬼平」というタイトルでアニメ化もされました。
このシリーズは火付盗賊改方長官・長谷川平蔵が江戸市中で起こる事件を解決していくという、捕物を題材にした時代小説です。
魅力的なポイントは、単純な勧善懲悪というだけでは終わらないところにあると思います。
もちろん善を勧めて悪を懲らしめるということは平蔵の基本スタンスでもあります。
しかし、いい人間でも悪事に手を染めてしまうことはあるし、逆に悪い人間がいい行いをすることもある。
白か黒かはっきりしないところがある、そんな人間味溢れる登場人物たちに対して、
平蔵もそれぞれの事情を斟酌して、時には情けをかけてくれることもあるのです。
悪いことをした奴は悪いのだから決められた通りに罰すること。
それは正しいように思えますが、平蔵は一人一人の人間を見抜いた上で適切な裁きを与えます。
とある裁判官は、周りの裁判官にこの作品を読むように勧めていたと言います。
他人の白も黒も合わせて飲み込める、そんな人間になりたいものだと感じました。
短編で、捕物と一口に言っても様々な筋立てで楽しませてくれるので、時代小説はあまり読んだことがないという方でも比較的読みやすい作品です。
私は面白くて一気読みした口ですが、じっくり味わって読むのもおすすめですよ。