閉ざされた校舎での不思議な時間を通じて、登場人物たちの心の傷や秘密が徐々に明かされていくミステリー要素の強い青春小説です。閉塞感の中で繰り広げられる人間ドラマはリアルで切なく、誰もが抱える孤独や葛藤に共感できます。時が止まったような静寂のなかで、少しずつ変わっていく彼らの成長が印象的な作品でした。
とある進学校の朝、高校3年生たちは、他の生徒たちが登校してこないことに違和感を覚える。自分たちの他に誰も登校してこないだけでなく、職員室には教師もいない、携帯電話も通じない、時計も止まっている。
ここで殺人事件が起こる、いわゆるクローズドサークルものかと思ったら、彼らがいるのは現実ではない。学園祭の日に自殺した同級生のことを思い出そうとして、それぞれが苦い思いを回想することになる。