湯川が「理論的には可能だが現実にはありえない」と評するトリックは、本当にやりすぎなくらい壮大で、それでも読み終えたあとには妙な説得力が残ります。論理で暴かれてしまうからこそ、綾音の祈りのようなものが逆に際立って見えて、胸の奥がひりひりしました。
タイトルの意味が反転するラストは、爽快というより、静かに冷たい刃を向けられたような読後感でした。誰かを救うはずの「愛」が、別の誰かにとっては取り返しのつかない暴力になる。そのどうしようもなさを突きつけてくる、ガリレオシリーズの中でもかなり後を引く一冊だと感じました。
本作は、毒殺という不可解な事件を軸に、被害者の妻、美しく、「聖女」とも思える存在を巡る“トリック当て”ミステリーで、その巧妙さにまず圧倒されました。 
さらに、“動機”や“正義”“口封じされた真実”といった、人間の感情や倫理の複雑さが静かに抉り出され、単なる謎解きではなく、読む者に「正義とは何か」「赦しとは何か」と問いかける深みを感じました。 
最後まで先が読めず、ページをめくる手が止まらず読了後には、心にざわめくような余韻とともに、この“救済”の意味について、しばらく考え続けたくなる一冊でした。











