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タイトルの通り“書けない”ことに向き合う物語でありながら、書くという行為の本質や苦悩、そして喜びをやわらかく描いた作品です。中村航らしい軽やかな語り口で、どこかユーモラスなのに胸にじんわり残るような余韻がありました。特に印象的だったのは、主人公が「書けない自分」と真摯に向き合い続ける姿。創作という行為が、特別な才能を持つ人のものではなく、悩みながら模索する全ての人に開かれていると感じさせてくれました。登場人物たちの距離感や空気感も絶妙で、静かな青春の匂いがするような作品です。書くことに悩む人だけでなく、何かに挑戦しようとするすべての人に読んでほしい一冊です。