原田マハの『生きるぼくら』は、引きこもりの青年・麻生人生が、祖母の住む蓼科で米作りに挑むことで、自分自身と向き合い、再生していく姿を描いた感動作です。
物語の冒頭、人生はネットゲームに没頭し、コンビニ食で空腹を満たすだけの生活を送っています。そんな彼のもとから、ある日突然母親が姿を消します。残されたのは置き手紙と年賀状。その中にあった祖母・マーサからの一通をきっかけに、人生は蓼科へ向かう決意をします。
この作品の魅力は、自然とのふれあいや人との関係を通じて、主人公が少しずつ変化していく過程が丁寧に描かれている点です。米作りという地道な作業を通じて、人生は「食べること」「働くこと」「誰かと生きること」の意味を実感していきます。
特に印象的だったのは、祖母との関係や、同居する対人恐怖症の少女・つぼみとの交流です。彼らとの関係は、人生にとって「人とつながることの怖さ」と「それでも誰かと生きたいという願い」を象徴しています。
また、母親の「突き放す愛」も深く心に残ります。守ることだけが愛ではなく、子どもが自分の人生を歩むために、あえて距離を置くという選択。その姿勢は、親子の関係を考える上で多くの示唆を与えてくれます。
この作品は、現代の孤独や生きづらさに悩む人にこそ読んでほしい一冊です。自然の中での暮らし、祖母の知恵、米作りの喜びを通じて、「生きることは、誰かとつながること」だと教えてくれます。














