『一人称単数』を読んでいちばん強く感じたのは、「一人称ってこんなにも揺らぐんだ」という不思議さでした。同じ“僕”が語っているはずなのに、短編ごとに少しずつ質感の違う孤独や後悔がにじんでいて、自分の過去を覗き込んでいるような気持ちになります。
読んでいるあいだずっと、これは作り話なのか、それとも村上春樹その人の記憶が混ざっているのか、判断がつかないまま進んでいくのも心地よい違和感でした。「私」という存在の輪郭がぼやけていく感覚が、ちょっと怖くて、でも癖になります。
派手な起伏はないのに、読み終えると、自分の昔の恋愛や、ふと胸に残っている些細な場面をそっと撫でたくなるような、静かな余韻が残る一冊だと感じました。















