【他人の行動の表面的な部分だけを見て判断していると、いつか大切なことを見誤るときもあるのではないか】
人の理解しがたい行動の裏には複雑な背景が隠されているのかもしれない。私は他者に対し、どこまで“想像力”をもてるのだろうか?口で言うのは簡単だが、実は非常に難しいことに本作で気づかされる。恵まれた環境にいる人間は、自分の理解の範囲内でしか判断できないし、その範囲から外れる者を「ずれている」「おかしい」と思い込む節がある。私もきっとそう。心抉られるセリフが多いが、ラストは優しい光がそっと差し込むので救われる。
2023年の本屋大賞にノミネートされてから
積読になったままだったのを読んでみました。
主人公はカフェの若き店長・原田清瀬。
ある日、恋人の松木が怪我をして意識が戻らないと病院から連絡を受けます。
なぜ意識不明になったのかの事情をしるために
松木の部屋を訪れた清瀬は、彼が隠していたノートを見つけたことで、
恋人が自分に隠していた秘密を少しずつ知っていきます。
登場人物の一人に天音(まお)さんという女性が出てくるのですが
なかなか癖の強い人物であり、最初は苦手だと思っていました。
なぜ癖の強い人物になってしまったかの背景や、彼女が考えた生きる術を
知ると私も彼女側に近いのかもしれないと親近感を持ちました。
面白い作品なので、ぜひ読んでみてほしいです。
恋人、親子、そして毎日顔を合わせる職場の人たち。近い関係であればあるほど、「他人を理解する」というのは、なんと難しく、ままならないことなのでしょうか。
物語の中で、私は岩井さんの言葉に強く共感しました。
「向いていないことに努力しても限界がある」「勉強ができなくても生きていく方法はある」。
こうした考え方は、時に「諦め」と取られることもあるかもしれません。けれど、障害のある子を持つ親としては、そう思わなければやっていけない瞬間が確かにあるのです。
できるようになるために親子で苦しみ抜くくらいなら、できないままでもいいから、ただ平穏に、笑顔で過ごしてほしい——。それは決して諦めではなく、切実な「願い」なのだと、胸が締め付けられる思いでした。
もちろん、懸命に努力を続けるいっちゃんの姿勢も、松木や清瀬が見せる理解ある温かな視点も、本当に素晴らしくて心に響きます。
正解のない問いに向き合いながら、それぞれが自分なりの「理解」を深めていく。
読み終えたあと、自分の周りにいる大切な人たちのことを、もっとゆっくり、時間をかけて知っていきたいと思える一冊でした。













