この本は浮世絵師広重の風景版画の奥深い魅力を専門的に解き明かした美術書として、非常に充実した内容でした。雨、雪、夜という自然現象や時間帯に焦点を当てることで、広重の繊細な表現技法と詩的感性がより鮮明に浮かび上がります。特に雨の線描や雪の表現方法、夜の闇の演出など、技術的な側面からの分析が興味深く、版画という制約のある技法でここまで豊かな表現ができることに驚かされました。神谷浩氏と前田詩織氏による解説は学術的でありながら分かりやすく、美術史の知識がなくても楽しめる構成になっています。図版も美しく、広重の作品の細部まで堪能できる点も素晴らしいです。日本の風景美への独特な感性と、それを版画で表現する卓越した技術の融合を深く理解できる、美術愛好家必読の一冊だと思います。
なぜ、昔も今も人々に愛されるのか。時代を超えたロングセラーの秘密
歌川広重(1797-1858)は、風景版画家として一世を風靡し、幕末浮世絵を支えてきました。本書では、おなじみの保栄版東海道五拾三次(全揃)はもちろんのこと、各種東海道、江戸名所絵、木曽街道らを収録。「雨」「雪」あるいは「月」「夜」「霧」といった印象的な情景に見られる広重一流のセンスやさまざまな仕掛けに注目します。
*150点掲載・全解説付き
はじめに
第1章 保永堂版東海道五拾三次
「東海道五拾三次之内」(保永堂版)
第2章 東海道
「東海道五十三次之内」(行書版)
「東海道」(隷書版)
「東海道五拾三次」(狂歌入)
「東海道」(人物東海道)
「五十三次名所図会」(竪絵東海道)
「双筆五十三次」
「東海道五十三對」
「有田屋版東海道」
「東海道張交図会」
「東海道五十三図会」(美人東海道)
第3章 木曽海道六拾九次之内
「木曽海道六拾九次之内」
第4章 江戸・諸国・伊勢
江戸名所
諸国名所
伊勢
論考・資料
「広重風景版画 魅力の秘密 広重を楽しむために」神谷 浩
「絵師 歌川広重の画業」前田詩織
年表
作品一覧
すべて見る
新着の本すべて見る
30日間で人気のまとめ記事





すべて見る
小説のまとめ記事





すべて見る
おすすめのまとめ記事





すべて見る
漫画のまとめ記事





すべて見る
自己啓発のまとめ記事




