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この本は浮世絵師広重の風景版画の奥深い魅力を専門的に解き明かした美術書として、非常に充実した内容でした。雨、雪、夜という自然現象や時間帯に焦点を当てることで、広重の繊細な表現技法と詩的感性がより鮮明に浮かび上がります。特に雨の線描や雪の表現方法、夜の闇の演出など、技術的な側面からの分析が興味深く、版画という制約のある技法でここまで豊かな表現ができることに驚かされました。神谷浩氏と前田詩織氏による解説は学術的でありながら分かりやすく、美術史の知識がなくても楽しめる構成になっています。図版も美しく、広重の作品の細部まで堪能できる点も素晴らしいです。日本の風景美への独特な感性と、それを版画で表現する卓越した技術の融合を深く理解できる、美術愛好家必読の一冊だと思います。