柚月裕子は『合理的にあり得ない』で楽しませてくれた。次はこの佐方貞人シリーズを読みたいと思った。そして、その1作目にこの『最後の証人』を読んだ。
主人公は弁護士で、殺人事件の裁判で検事と対峙することになる。構成は、プロローグ、公判初日、公判2日目、公判3日目、判決、そしてエピローグになっている。
単純な推理小説と思っていたが、まったく違っていた。ひとつひとつストーリーが進みにつれて、次はこうなるだろうと予想しても、ことごとく違うストーリーを描いていった。
特に、被告人と被害者の描き方にはとても驚かされた。ネタバレになってしまうので、詳しくは言えないので、本作を読んで欲しい。そして、最後はカギを握っていた「最後の証人」で見事なエンディングを迎えた。
推理小説は、結末を迎えるといろいろな感情が生まれる。真実を知って悲しい結末を迎えたりもする。この作品でも、結末の真実を知って、少し悲しい気持ちにもなったが、それを上回る幸せ感を感じ、読後感を良いものにしてくれた。
佐方貞人シリーズは傑作の予感がした。ぜひとも全作品を読みたいと思う。
なぜ、犯罪者をかばうのか
この問いはとてつもなく難しい
私は罪を犯した者をかばうつもりはないが
この世の中には本当の罪で捕まった者だけではない
佐方もまた検察官から弁護士へ移った理由も
あるが、彼は「本当の罪によって人は裁かれなけば
ならない」という考えがある
彼の強い思いが垣間見れる