ありがとう
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泥くさくて荒々しいのに、どこか人間らしさがにじみ出てくるところが魅力でした。華やかな印象のある室町時代の裏側に、こんなにも混沌とした世界があったのかと驚かされます。登場人物たちは、正義とも悪ともつかない曖昧な立場で、それでも必死に生き抜こうとする。その生きざまが、生々しくて力強くて、読んでいて胸がざわつきました。整った物語ではないけれど、だからこそ一人ひとりの人生がリアルに感じられました。読み終わってからも、あの埃っぽい空気がずっと残っているような一冊です。