心理描写の細やかさとリアリティが秀逸で、「もし自分だったら…」「あの人なら…」と考えずにはいられないような鋭さがあります。普通の生活の裏側にある“誰もが抱え得る闇”を、静かに、でも確実に暴き出す力がこの作品にはあると思います。 
ただ、その「生々しさ」「後味の重さ」を受け入れられない部分もあります。
とはいえ、私はこの「後味の悪さ」こそがこの作品の持つリアルさだと感じました。不安定な日常、人間の弱さ、社会の片隅で叫びをあげる女性たち、それらを見つめて考えさせられる、そんな余韻の残る読書体験でした。
泥棒、放火、殺人など、何かがどこかうまく行かなくて不本意ながら犯罪を犯してしまう人たちを取り上げた短編集。
凶悪犯を描くストーリーではないけれど、もう1つかけ違えることで誰もが同じように犯罪者になってしまうのかもしれない、と思うと怖いかも、と感じる一冊。
辻村深月の直木賞受賞作。辻村深月は人の嫌な部分を描くのが上手なんだと思う。心の中や感情の200%を吐き出してしまうような表現力だ。この小説が楽しいかと言えばそうではないし、感動する小説かと言えばそうでもない。見たくないものを見せられたような小説だ。それでも、その人の嫌な部分を芸術に昇華させた見事さが凄い!作家としてのあふれんばかりの才能を感じてしまう。

















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