このシリーズは以前読んだが、事件の関係者の扱いがおざなりだったのが不満だった。
怪異を体験する視点人物としてメインで描写され、読者も感情移入していたキャラなのに、事件後のフォローが至らないというかなんともお粗末というか「トリックと犯人はわかったけどそれでこの子はどうなったのそれが気になるのに!」と消化不良でじたじたしたのを覚えている。
本書ではそのモヤモヤがほぼないので満足。
遊郭を舞台にしたホラーとしても面白く、それにも増して遊女たちの嫉妬や裏切り、駆け引きを主軸に据えた愛憎ドロドロの人間ドラマにひきこまれる。遊郭でのみ通じる隠語など、当時の世情も垣間見えて勉強になる。
結局真相がなにもわからないじゃないかと不満な向きもあろうが、思春期の多感な少女が過酷な境遇に抑圧されていたとすれば、事の発端も大体わかるように書かれている。
終盤のどんでん返しは三回名前を変えながら本質は変わらず在り続けた建物と人の歴史がオーバーラップし、なるほど、ちゃんと伏線になってたんだ!と感嘆した。
いわゆる幽霊よりも、生きてる人間の情念や数奇な偶然が怖い系なのだが、遊郭を扱ったエンターテイメントしても完成度が高くそちら方面が好きな方にも勧めたい。
欲を言えば、時代を跨いで遊郭で働き続けた遊女たちのその後をもう少し掘り下げてほしかったが無粋だろうか。
時代や社会に翻弄され続けた女たちの余生は、想像に任せた方が余韻を残すかもしれない。
遊女になる為に引き取られ、同じ建物で寝起きし三年間みっちり教育を受けた緋桜が、あそこまで実情に無知なのが最大のファンタジーである。











