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老舗呉服店の養女である琴子は、姉弟のように育った甥の柿彦と着物のリユース店で着物の査定の仕事をしている。幼い頃から着物の記憶や想いのようなものを夢で見ることができた琴子は、その力を査定でも使っていたが、柿彦は琴子の身体に危険があるのではと心配していた。そんなとき持ち込まれた、戦前らしき椿の銘仙の記憶を琴子は夢に見るが…。不思議な力を題材にしているが、落ち着いた筆致で、浮ついたところがない。かたい職についていようがついていまいが、自分をどのくらい理解しているかが、生き方に関わるのだなと登場人物から伝わってくる話だった。