同じ著者の『マチネの終わりに』が(多くの読者からは遠い世界の)リアリティ溢れる作品だったのに対し、こちらは近未来の設定。
宇宙飛行士の明日人(あすと)を巡る人間関係と、アメリカ大統領選挙。宇宙船内で起こった問題を前者の問題として捉えるか、高度に政治的・公的な問題として捉えるか、登場人物自身がその混乱を吐露しているように、中途半端で入り込めないままに読み進めることになった。
技術が今以上に発達した近未来の社会は、人が心穏やかに暮らせる世界ではない、ということは描けている、と言えるかもしれないが。