神近市子が直面した社会の壁や女性運動の厳しさに、感情的に引き込まれる部分が多かったです。特に、彼女の信念を貫こうとする姿勢には深く感動し、今の時代に生きる自分にも何かを感じさせられました。歴史的背景に触れつつ、人物像を深く掘り下げている点が印象的でした。
1888(明治21)年長崎県生まれの神近市子は、女子英学塾(後の津田塾大学)在学中から青鞜社に参加し、1914(大正3)年東京日日新聞記者となる。その後社会主義思想に接近するが、1916年に恋愛関係のもつれから大杉栄を刺傷して懲役2年の刑を受ける(日蔭茶屋事件)。出所後は『女人芸術』『婦人文芸』の創刊に参加して評論活動を行い、1947(昭和22)年に民主婦人協会を設立。1953年日本社会党(左派)から衆議院議員に当選すると、1回の落選をはさんで1969年まで務め、売春防止法の制定等に尽力した。日蔭茶屋事件以後、戦前戦後を通じて「大杉的なるもの」と向き合いながら、その時々に女性文筆家である自身の「言論」への要求に応えることで女性輿論を意識した「インテリゲンチャ」としての役割を果たそうとした神近に、「メディア出身議員」の典型を探る評伝。本シリーズ唯一の女性代議士がいよいよ登場。
序章 メディア化した女性、神近市子の有名性
1 「嫉妬」から大杉栄を刺傷した「情婦」
2 神近市子のメディア露出と自己省察
第一章 「本を読む女」の初志貫徹
1 幼年時代の記憶ーー神近家の周縁:兄・神近伝一
2 長崎から東京へーーー憧れの文学
第二章 自由恋愛をめぐる波瀾万丈
1 婦人記者としての活躍
2 葉山日蔭茶屋事件(一九一六年一一月八日〜九日未明)
3 事件のその後
第三章 学歴エリート女性の売文生活
1 階級を離脱したリテレイト
2 リブートする女性ネットワーク
3 神近市子主宰『婦人文芸』の位置づけ
4 戦時下での文筆活動
第四章 民主婦人の去華就実
1 結婚生活の終わり
2 落選からの再出発
3 長崎出身女性の活躍
第五章 六五歳からの政治家人生
1 売春防止法案成立への道のり
2 売防法成立と「世論」
3 女性としての政治活動の困難
終章 女性の生き方と個我尊重
あとがき
参考文献
神近市子 著作リスト
神近市子 略年譜
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