真夏の方程式は、ガリレオシリーズの中でも、いちばん静かに心を削られた作品でした。海辺の町の風景があまりにも穏やかで、その中に隠れている罪や秘密との落差がきつくて、読み進めるほど胸の奥がざわざわしてきました。
湯川と少年・恭平の関係性がとても良くて、ただの名探偵と子どもの組み合わせではなく、理科好きな子どもの好奇心に、湯川が少しずつ情を見せていく感じが微笑ましくも切なかったです。その分、彼が最後に選ぶ態度の重さが、ずしんと響きました。
環境問題や過去の事件、大人たちの嘘が絡み合っていく中で、一番残酷なのは「子どもには真実を知らない方が幸せだ」という発想かもしれないと感じました。科学で真相を見抜けてしまう湯川が、あえて見て見ぬふりをするようなラストは、正しさとは何かを静かに問い続けてきます。
物理学の理論と観察から“事件の真相”を解明する湯川の推理力はもちろんのこと、彼が少年に対して見せる優しさや、人間の弱さ・罪と“赦し”を描く姿勢に、科学ミステリー以上の“人間ドラマ”としての温かさを感じました。 
また、美しい海や夏の風景、少年の無邪気さと対比されるように、人間の抱える罪や秘密の重さが静かに胸に迫り、読了後には、ただの謎解き以上の余韻が残りました。総じて、『真夏の方程式』は、推理小説としての完成度と、人間の複雑な感情を丁寧に描く深みを兼ね備えた、心に残る傑作だと感じました。












