老いるとはどういうことか、そして老いとどう向き合うべきか。
内館牧子さんの『老害の人』は、高齢者の尊厳と、社会における役割について深く考えさせられる一冊でした。
主人公である元大学教授の樋口誠太郎は、定年後、社会との接点を失い、自身の存在意義を見出せずに苦悩します。
彼の言動は時に痛々しく、しかしながら、私たち自身の未来の姿を映し出しているようにも感じられました。
物語を通して、年齢を重ねることの孤独や、変化していく社会との摩擦がリアルに描かれています。
同時に、樋口が自身の老いを受け入れ、新たな生き方を見つけようと模索する姿は、読者に勇気を与えてくれます。
老害という言葉が持つネガティブなイメージを覆し、誰もが歳を重ねても輝ける社会のあり方を問いかけているように感じました。
ユーモアを交えながらも、現代社会が抱える高齢化の問題に鋭く切り込む内館さんの筆致に、深く感銘を受けました。