以前から、よい本だといろんなところで聞いていたので是非に読んでみたいと思いました。
主人公の女性が不倫相手の子供を誘拐する話なんですが、その誘拐も悪意の全くない自然の衝動からでた行動だったということが、この話の大きなポイントだと思います。
しかし、幾ら愛情があって二人が幸せな時間が過ごせたとしても、犯罪は犯罪なんですよね。
赤ん坊にかけた愛情の分、犯罪の罪を軽くしてほしいと読みながら思っていました。
でも、当の本人は何もかもを受け入れてしまい、余計な罪まで背負ってしまう・・・。
二人が過ごした時間は、そんな簡単に壊れてしまうのだろうかと切なくなります。
この本は、Ⅱ部構成のようになっていて、誘拐した女性からみたストーリーとその彼女が逮捕された後、赤ん坊だった少女が成長してから少女からみたストーリーに分かれています。
はたして、誘拐されていた少女はどんな思いで女性との時を過ごしていたのか・・。
誘拐され、育った幼い日の記憶は彼女にとってどんな影響を与えたのか・・。
本当の両親と再会して、家族と少女の間に何が起こったのか・・。
これがみどころです。
そして、この少女の想いがあるからこそ、この本の結末が行くべきところにたどり着くのだと思います。
この結末に、納得できる面とそうでない面があると思いますが、結果的にはこれでよかったのだと思いたいです。
ある日、他人の子どもを連れ去ってしまった希和子。
偽りの母と子の逃亡生活は様々な人の助けを借りながら続いて行く。
連れ去りという犯罪行為なのに、薫を思いやる希和子の愛情が感じられ、物悲しい。
最後の小豆島での暮らしは人の温かみさえ感じてしまう。