手のひらでノートの背中をささえ、最初の白いページをひらいたそこに、すべて真夜中の恋人たち、と書いた。
夢はいつもおなじだった。
まるで恋人のように冗談を言って笑いあったり気持ちをたしかめあったりして楽しいときを過ごしていた。
肌と肌がふれることがこんな感触のするものなのか・・・。
体温を、指さきでなくお腹や背中といったひろさで受けとめることが・・・。
何度でも思わずにはいられないほどの快感にうっとりとゆれ・・・。
すきな人の目をこんなに近くでみつめることがこんなにも鮮やかでやさしく、体のいちばん奥のあたりからうまれかわるような思いをするものなのか・・・。(本文より)
真夜中に光が見える。
それは、きれいな涙だろうか?
それとも、それが恋なのだろうか?
『すべて真夜中の恋人たち』
ーー川上未映子が描く繊細で美しい世界がある。