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ガリレオシリーズの中でも、怒りと悲しみの温度がいちばん高い物語だと感じました。行方不明だった佐織が遺体で見つかり、かつて無罪になった男がまたもや釈放される、その時点で胃のあたりがずっと重かったです。
町中がその男を憎みながらも、誰もはっきり何も言わない沈黙の空気が、とてもリアルでした。復讐劇としては痛快さよりも、「ここまで追い詰められたら、自分だって同じことをするかもしれない」というイヤな共感のほうが先に立ちます。
湯川や草薙は、真相を暴くことが本当に正しいのかというジレンマに何度も立たされていて、論理で割り切れない領域に足を踏み入れてしまった大人の揺らぎがにじんでいました。読み終えたあと、誰を責めればいいのか分からないまま、ただ胸だけが静かに疲れているような、重い余韻が残る一冊だと感じました。
















