山東京伝という江戸時代の戯作家の深い魅力に触れることができました。有澤知世さんの研究は、山東京伝の作品における考証、意匠、戯作の要素を細かく解説しており、その芸術的な側面や社会的背景が非常に興味深いです。
江戸時代の文化や風俗、さらには当時の文学や舞台芸術の影響を受けた山東京伝の作風を理解する手助けとなります。文学や江戸時代の文化に興味がある人にとって、貴重で学びの多い一冊です。
十九世紀江戸という都市空間を生きた文化人・岩瀬醒は浮世絵師・北尾政演として活躍の後、江戸戯作壇の中心人物・山東京伝として洒落本・黄表紙・合巻・読本等多くの領域で流行を生み出した。寛政の改革による筆禍事件以後は一流の学者たちと交流をもち、近世初期の風俗や事物の考証に傾倒。その成果を随筆にまとめたことが知られている。雅俗両面にわたる京伝の営為を総合的に論じ、中でも晩年の成果に対して新たな光を当てる労作。
序論 十九世紀の文化人”岩瀬醒”の営為
第一部 考証趣味のネットワーク
第一章 菅原洞斎の古書画展覧会
第二章 山東京伝の考証と菅原洞斎 -- 『画師姓名冠字類鈔』に見る考証趣味のネットワーク
第三章 京伝作品における異国意匠の取材源 -- 京伝の交遊に注目して
第二部 模写と意匠
第一章 京伝『籠釣瓶丹前八橋』における<絵馬の怪異>
第二章 京伝合巻における古画 -- 『籠釣瓶丹前八橋』・『糸桜本朝文粋』を例に
第三章 半紙本体裁巻のデザインを読む -- 神戸大学附属図書館蔵・京伝『桜ひめ筆の再咲』を手掛かりに
第四章 生まれ変わる意匠 -- 京伝作品における野晒模様の衣装
第三部 戯作の方法
第一章 京伝合巻と図会もの -- 京伝の挿絵利用方法についての一考察
第二章 京伝『桜姫全伝 曙草紙』小考 -- 清閑寺の場面を中心に ※桜姫全伝=組文字
第三章 山東京伝と小枝繁 -- 先行作品の利用方法に注目して
第四章 文化十年の京伝合巻 -- 『通俗画図勢勇談』利用に注目して
第四部 寛政の改革以後の京伝と戯作
第一章 戯作者の表徴 -- 京伝・三馬に注目して
第二章 江戸の戯作者という<ブランド> -- 式亭三馬の広告文を例に
第三章 十九世紀文化人の戯作 -- 京伝の自序に注目して
結語
初出一覧
参考文献一覧
索引
山東京伝という江戸時代の戯作家の深い魅力に触れることができました。有澤知世さんの研究は、山東京伝の作品における考証、意匠、戯作の要素を細かく解説しており、その芸術的な側面や社会的背景が非常に興味深いです。
江戸時代の文化や風俗、さらには当時の文学や舞台芸術の影響を受けた山東京伝の作風を理解する手助けとなります。文学や江戸時代の文化に興味がある人にとって、貴重で学びの多い一冊です。