【あなた自身を1分間で「表現」してください】
とにかく『何者』というタイトルが秀逸だなぁと。「何者」にもなりきれていない人たちが、自分が「何者」かであることを周りにアピールするんだもんな、就活って。就職したからといって、「何者」かになれるものでもないと思うけど。所詮、自分は自分にしかなれないのだ。よそゆきの自分をアピールして勝手に合否を判断されるのが、就活というものなのだけど、落ちるたびに、自分を全否定された気がして、自己肯定感ダダ下がりだし、結構残酷で不思議なイベントだな。嫌でも周りの同級生と比較しちゃうし、他の人の内定が素直に喜べないのは正直共感できる。
強烈な印象が残った!200%の力を振り絞って、ナイフで切り裂かれたような・・・。大人でなく学生ならではの本音のやり取りがそう感じたのかもしれない。心をエグる作品だ。主人公・拓人が、最後の面接場面で、「短所は、カッコ悪いところです。」「長所は、自分はカッコ悪いということを、認めることができたところです。」こんなセリフで終わる。たぶんこの先うまく成長していけるのだろう?と、最後は何となくホッとさせてくれた。あと、サワ先輩という先輩学生が、良い味を出している。
大学生の就職活動がテーマの小説
ツイッターのアカウントを2つ作って片方に知人の悪口を書いたり、バイトを仕事と言ったり、内定が出た人の内定先にブラックと付けてネット検索したり、人の痛さや醜さがこれでもかと出てきた。
登場人物は留学して卒業が遅れる、内定が出ず卒業を遅らせるなどみんな留年している。ストレートに卒業しないと内定が出ないようにも見えた。
直木賞を受賞したこともあって、評判をよく耳にしていた本作。
なんとなくの気持ちで読んでみたことを反省するくらい、衝撃を受けました。
主人公は、演劇サークルで脚本を書いていた経験を持つ拓人。彼の目線で物語が進みます。
時は就職活動の始まる12月。
拓人のルームメイトで明るいキャラクターの光太郎や、光太郎の元カノで拓人が好意を寄せる瑞月など、
就活をするタイミングの大学生5人が、それぞれの就活を始めていきます。
特徴的なのは、物語の合間にTwitterの投稿文章が挟まるところ。
そもそも最初の登場人物一覧が載るページには、Twitterのプロフィール画面が紹介されています。
本作は、単なる大学生の就活奮闘記ではありません。
“何者”かに見られたい、焦りや不安を抱える就活生の人間関係が、SNSも絡めて描かれていくところがポイントです。
そして私が衝撃を受けたのは終盤のとあるシーン。
読者として安全な外側からこの世界を覗いていたはずなのに、突然内側から言葉のナイフを投げつけられたような感覚を味わいました。
どのシーンかは、読めばすぐにわかると思います。
そして読後は、一体どうしてこうなってしまったんだろう、自分は彼らと比べてどうなんだろう、なんてことが頭の中をぐるぐると…。
共感ポイントが多いだけに考えさせられるポイントも多い、そんな作品でした。