『みをつくし料理帖』の著者として知られる高田郁さんが送る時代小説シリーズです。
源流篇という題名からわかるように、シリーズ全体の序章といった内容の本作。
主人公は、学者の父を持つ幸という少女です。
女として生まれたからには家のことをして働けという母の意見に反して、学ぶことが大好きでした。
時は享保。米作が壊滅状態となった享保の大飢饉以降、様々な不運が幸やその周囲を襲っていきます。
結局、幸は学問の世界から遠ざかり、九歳の時に大坂の呉服屋「五十鈴屋」へ奉公に出ることとなりました。
源流篇では、その幸が五十鈴屋での生活に慣れていく過程とともに、五十鈴屋の状況が克明に描写されていきます。
最終章の幸は十三歳。七歳から物語が始まっていることを考えると、実に七年間分の内容が詰まっているのです。
非常にテンポよく季節が巡っていくので、スムーズに読み進めることができます。
父に「商は詐だ」と教えられ商売に不信感を抱いていた幸でしたが、
その商いを実際に傍で見ている内に心を開いていき、学びたいという意欲を持ち始めます。
商いについて自分の頭でしっかりと考えながらも、女衆として奥向きの仕事も真面目にこなしていく。
そんな頑張り屋の幸がどういう大人に育つのか。
これから先も降りかかってくるであろう苦難に、どう対処していくのか。
次巻以降も気になってしまう作品です。