ありがとう
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閉ざされた空間で繰り返される会話や沈黙の中に、じわじわと広がる違和感と緊張感が見事に描かれていて、読んでいて何度もページをめくる手が止まりました。登場人物たちの微妙な心理の駆け引きや、真実と虚構の境界があいまいになる構成が巧みで、読み進めるうちに自分も舞台の中に閉じ込められたような感覚になりました。静かな語り口の裏にある濃密な感情と空気の重さが、読後も長く心に残り続ける、不思議な余韻のある作品です。