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この作品は、主人公の田島周二が多くの愛人たちと別れようとあがく姿を描いた、どこか滑稽でユーモアあふれる物語でした。  まず、「これまでの太宰作品とはちょっと違うな」と驚きました。というのも、暗く重たいテーマではなく、軽妙なタッチで“別れ”や“逃避”のドタバタ劇を描いており、思わず笑ってしまうシーンがたくさんあったからです。 
ただ、その裏側には、主人公の迷いや虚無感“本当の自分”と向き合えない孤独や、戦後の混乱の中で揺れる人間関係の不安定さが透けて見えて、軽さの奥に深い淋しさも感じさせられました。 
そして、作品が未完であることもまた、この物語の味わいだと思います。結末を知らないからこそ、読者それぞれが「もし続きを読めたら…」と想像を巡らせられる。その自由な余白が、グッド・バイのユニークな魅力のひとつだと感じました。














