『黒牢城』という作品で第166回直木賞を受賞した米澤穂信さんの、読書エッセイ集です。
作家生活20年の間に各所で発表された書評などの文章に、他作家との対談を文字に起こしたもの、
そして本作のために書き上げたエッセイなどなど、とにかく本への愛がぎゅっと詰まっている1冊です。
「ご挨拶より本の話をしませんか」という前書きのタイトルからも、それが察せられることと思います。
内容はというと、お勧めの本を紹介する文章を読めば読みたい本が増え、
好きな本を紹介する文章を読めば読みたい本が増え、
日記のような文章を読んでも読みたい本が増えるという、恐るべきものとなっています。
この要因の一つが脚注だと思います。
本作では著者と編集部がそれぞれ必要なところに脚注を付けていて、
例えば本文ではタイトルしか出ていない本でも、脚注で内容がしっかりと紹介されているのです。
それを読むとあら不思議、面白そうだなあ、読みたいなあ、という気持ちにさせられるわけです。
本文に登場した作品や作家は、後ろのページに索引が掲載されているという親切ぶり。
読みたい本リストの作成が捗りまくりです。
著者注も面白いです。ミステリーを読む楽しみについて書いた「割り切れないんですよ」という文章については、
古い文章だからこそ恥ずかしがったり突っ込んだりする注が付けられていて、私はニヤニヤしながら読みました。
それから、「地獄と作家と京都旅」や「本に呼ばれて修善寺詣」
この二つは旅エッセイのような雰囲気があって好きです。
そんな本作、米澤さんのファンにはもちろんお勧めですが、
もしそうでなくても、例えば読書案内を求めている方にとっても発見の多い本だと思います。
ぜひ実際に手に取って読んでみてくださいね。