2歳の息子を誤って死なせてしまった主人公。妻とも離婚して職も失い、日本を出てギリシャで暮らすことになります。たまたまシンガポールで出会った女性がギリシャの人だったので、ギリシャで暮らすことになり彼女と結婚します。
しかし、主人公の中には死んだ息子の姿が残っていて、ギリシャで生活したいがためにギリシャ人の妻を騙して結婚したことや別れた元妻への想いなどで先に進めなくなっているようでした。
そんな中、障害を持った子どもを持った教師の話を聞き、彼女が書いた本を読みます。そこには、なぜ自分の所に障害を持った子どもが生まれてきたのか。その理由があるはずだと追求し、提婆達多の話にたどり着きます。
提婆達多は釈迦の弟子でしたが、象を酒に酔わせて釈迦を襲わせたり、慢心をおこして対敵しゆえに生きながら地獄に堕ちたという言い伝えです。しかし、提婆達多の前世は釈迦の師だったという説もあることから、過去世の話が出ます。
過去世とは仏教でいう三世のひとつで、未来世、現在世、過去世とあります。人は生まれながらに裕福な家に生まれることもあれば貧しい家に生まれることもあり、五体満足に生まれることもあれば障害を持って生まれることもある。そこには理由があって過去にどんな人生だったかが影響すると言うものです。
息子が自分のもとに生まれてきたことや、突然亡くなったことにも意味があり、来世でまた会えるという希望が主人公の気持ちを支えます。
苦しみを受け入れることが、前に進める唯一の方法でそれが過去世の存在を肯定するすることだと別の本で書かれていました。