「あの人は殺されたんでしょう?」
つつがなく葬儀を終えた後で、故人についてそんなことを言い出す人がいたらびっくりしますよね。
しかしこの作品では、まさにそういう発言が飛び出してしまうのです。
アバネシー家の当主リチャードの葬儀後、遺言が公開された場面でのことでした。
リチャードは病気で亡くなったという医師の診断も下されていたのに、
末の妹のコーラは何かを知っているかのような雰囲気で「だって、リチャードは殺されたんでしょう?」と口走ります。
周りの親族たちは、何を言っているのかわからないといった風を装いながらもどこか不安気。
翌日、そのコーラが死体となって発見されてしまうのです。
コーラを殺したのは誰か、そしてリチャードは殺されたのか?
この二つの謎を解き明かすために立ち上がるのが、名探偵ポアロなのです。
表向きは平穏だった世界が、たった一言で一変する展開がスリリングで面白いポイント。
コーラが殺された後もちょっとした事件が起きたりして、
次々と出てくる謎に引っ張られてすいすいと読み進められます。
ポアロの出番は多くないのですが、彼の方から仕掛けていくトリックにも注目です。
最初の方のページには登場人物の一覧に家系図まで載っていて、
その多さに私は少し尻込みをしてしまったものですが、
読んでいる内に人物の特徴などは把握できていくので心配ないと思います。
インパクト大の結末は必見ですよ!