推し活を仕掛ける運営側の久保田、推し活に熱中するファン澄香、そして愛する推しがいなくなり陰謀論に嵌る隅川。三者それぞれの視点から、現代の「推し活」の構造を描いた作品です。
この物語が示す視野が広いと自分を持て余し、視野を狭くすることで満足を得るという構図には、確かに!と思わず納得させられました。賢すぎて色々なものが見えてしまう人は、考えすぎることでかえって幸せそうに見えません。一方で、他人からどう思われるか関係なく、ただ自分の欲求に素直でいられる人は、純粋に楽しそうに見えます。
運営側の「我に返らせてはいけない」「自分を使い切らせることで幸せにさせる」という、ファンへの冷たい目線が非常に怖かったです。ブームは作られているのだろうけれど、その裏側にある目線は、実際にはもっと温かいものであってほしいと願います。
現代の熱狂の裏側にある本質を鋭く抉り出す、非常に読み応えのある一冊でした。











