【もしかして、今、夫は狂っているんだろうか】
もうすっかり高瀬さん作品の虜。「夫が風呂に入らなくなった」というキャッチーでありながらも深く踏み込んではいけないそのフレーズに思わず惹かれた。私は、衣津実のようにある日突然変わってしまった夫に寄り添える程の包容力や優しさを持ち合わせた人間ではないが、どん詰まりの状況で自分の思考に気付かないふりをしたり、相反する感情がせめぎ合うアンビバレンス心理の場面には共感を覚えた。夫にとって息がしやすい場所での結末は彼の気持ちを考えるとある意味ハッピーエンドなのかもしれない。