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50年以上前の小説でありながら、描かれている介護の現実が全く古く感じられず、驚きました。もちろん、介護施設に入れることへの抵抗や世間一般の理解は変わりましたが、介護の大変さは今も昔も変わらないのだと痛感します。
「長生きすることがリスクになる」時代がずっと続いているのかと思うと、背筋が寒くなります。この物語は、まさに「老人を生かさず殺さず」という厳しい状況を映し出しています。
茂造は、息子や娘のことすら忘れてしまっても、体は元気で食欲もあり、かなりの距離をスタスタと徘徊します。体が大きく力もあるため、その介護はどれほど厄介だったでしょうか。
また、体は動かないけれど口は達者な隣の門谷家のお婆ちゃんも、それはそれで大変そうです。
散々いびられていたにもかかわらず、しっかり面倒を見る昭子の強さには頭が下がります。
老いることの孤独と、それに向き合う人々の姿がリアルに描かれた、深く考えさせられる一冊でした。