個性的なキャラクター同士が繰り広げる会話の応戦が面白く、読破しているシリーズです。
ページをめくると心根の優しいキャラクターたちに彩られた温かい世界が出現!
今回は主人公・紗良が新年の挨拶をしに、由緒ある実家へ帰省するシーンから物語が始まります。
家族との久しぶりの再会に話が弾むと思いきや、帰省早々、反りの合わない兄・冬馬の機嫌を意図せず損ねてしまう紗良。
紗良のことを羨んで嫌味を言ってくる冬馬に、彼女は思わず“未来を見据えた恋人がいる”と口走ってしまいます。
突如として彼氏役に抜擢されたのは……ホテル猫番館のコンシェルジュ・要。
紗良のために偽装の彼氏を演じることになるのですが、果たしてどうなるのでしょうか!?
ここでは、相手を想うが故に生じる感情の狭間で揺れ動く恋心に注目です。
また、作中にはホテルで働くスタッフたちの様子も丁寧に描かれていて、仕事への愛の深さが随所に見受けられます。
――ここで働くことに誇りを持ち、このホテルの魅力を最大限に伝えたい。
それは相手の良いところを真似て自分のスタイルに取り入れていく姿として表れていて、歩み続けるひたむきさが格好良く、拍手を送りたい気持ちになりました。
そして、その熱い想いはキャラクターの負の感情さえ、かき消します。
結果勢いよく焚きつけられるのは、心の中に灯り続けた純粋にお客様に喜んでもらいたいという気持ち――
煌めく輝きをまとい自信を持って仕事をしているからこそ真摯に相手と向き合うことができ、
その中で趣向を凝らした最高のおもてなしの数々が生まれるのでしょう。
気づけば、私は尊敬のまなざしを向けていました。
自分で限界を決めず可能性を見出すことの大切さに気付ける作品です。
ぜひ一度、手に取ってご覧ください。