タイトルの「不滅のあなたへ」は主人公の不死者・フシをさすと同時に、彼と共に世界を旅する、既に死んで魂のみとなり、故に不滅の存在をさすのかもしれない。
今巻で一気に時間が経過するので(それも百年単位で)とまどう読者も多いかもしれないが、「これはそういう物語だ」と思えばすんなり受け入れられる。
一個で完結する作品ではなく、フシと彼を巡る人々の足跡をしるす壮大なクロニクル……年代記だと。
元よりフシの成長と変化を描く主旨、変わりゆくものと変わらざるもの、対比と受容がテーマだと認識していたので、人との出会いと別れを限りなくくりかし、価値観を変革していくフシを見守りたくなる。
これまで出会ってきた人との別離、喪失を体験し、「こんな辛い思いをするくらいなら独りでいたい」と心を閉ざすフシ。そんな彼をだがしかし世界は、彼を知る人々は放っておかない。
自我が芽生えてより経てきた過酷な旅路で出会った者、あるいは大人になり、あるいは代替わりを果たしたその子孫が、かわるがわるフシのもとを訪れて彼に導かれ導いていく。
今巻驚いたのは、過去エピソードの重要キャラがあっさり再登場して死んでしまったり、フシの「獲得」によってその死が確定してしまうこと。
だからといって命が軽んじられてる印象はなく、彼ら彼女らの想いは連綿とフシに受け継がれているのだと示される描写に胸が熱くなる。
そしてヒサメがかわいい。
本作に出てくる幼女はみんな素朴で無邪気なかわいさにあふれているが、ぐしゅぐしゅの泣き顔など、容赦なく顔を崩してくるのが好感触。
フシを巡る人々の思惑も入り乱れ、ノッカーを駆逐する集団が結成されたり、伝説的存在のフシを崇める新興宗教が成立したりと、全巻通して背景を俯瞰しているといっそう時代のうねりが感慨深い。
個人的にはハヤセの子孫の青年の初恋(?)が皮肉な因果で一番面白かった。











