偶像崇拝が禁止されているはずのユダヤ教の書物ハガダーで、美しい彩色で人物画が描かれたサラエボ・ハガダーが見つかる。古書鑑定家のハンナは、ハガダーのレポート作成のため、挟まっていた蝶の羽や塩の結晶、ワインのシミなどの調査のため、世界中を飛び回る。
…ハガダーの謎の一つ一つを取り上げ、それぞれの時代や原因から想像された物語を間間に挟みながら、ハンナ自身の生い立ちや人間関係を描いていく壮大な話。ユダヤ人の扱われ方が時を遡るようにして紡がれ、血脈や歴史を伝えてきた名もなき人がいたことが悲痛に伝わってくる。