冒険者スタンクとエルフのゼル、天使で両性具有、実質男の娘枠なクリムらが異種族の風俗嬢(=サキュ嬢)を10点満点制でレビューしていく性癖の玉手箱なギャグ漫画。
よくぞモンスター娘の生態をここまで本気出して考えたな?発想の勝利。
先にアニメを見てから原作を読んだのだが、こっちの絵柄のほうがずっとポップでかわいくテンポもいい。一話ごとのページ数が少ないのでサクサク読める。
あらすじからドギツいエロ漫画を想像する人は多かろうし、下ネタが多く過激な描写もそこそこあるのは否定しないが、ハッキリ見えるのは乳首くらい。
本番描写は青年誌のちょっとエロいギャグ漫画程度で省略されてるので、ガッツリエロを期待して読むと肩透かし。
この作品の肝は、異種族が混在するファンタジー世界の性風俗事情をマジで考えて、そこから派生する多様な価値観やシステムまで徹底して作りこんだ点。
有翼人は女の子の日に無精卵を排泄し、欲求不満がたまると通常二個のところが三個になる。
フェアリーはサイズ制限がある故に小さめの男性に人気、ミミックは丸呑みフェチに需要が出るなど、あー確かにニッチな性癖に刺さるねと大納得。契約に縛られる悪魔の話も面白かった。
この世界ではどんな特殊性癖の持ち主にも対応する店があり、客と女の子、双方の需要と供給が成立するサービスとして認知されてる。
ある意味現実社会よりずっと先進的だし、妊娠性病予防の魔法陣の設置が全風俗店に義務付けられているので、女の子も楽しんで働いてるように見える。
ババア専もロリ専も奇乳フェチも、社会的に邪道とされるもっとヤバい性的嗜好の主も、頭ごなしに否定されず「それもアリだね」と誰かが共感を示す(さすがに獣姦は総スカンだったが……)風通しのよい世界だ。
男尊女卑や女性差別を助長するというのは短絡的な見方で、むしろ本作の女性陣は、男性のスケベ欲を上手く利用し己の目的を果たす、実際的な現実主義者が多い。魔女デミアが代表例だ。
そして本作は、なろうに腐るほどある異世界転移ものへのアンチテーゼとしても機能している。
アニメ一話にてスタンクは名家の出身で、父親はハーレムの主と匂わされるが、原作でも転移者への言及があり、スタンクの父親=異世界転移ハーレムの主人公の可能性が出てくる。即ちスタンクは二代目。
「私も転移者と話すことはあるんだけどさー世界に魔素がまったくない事が前提の技術しかないからあんまり役に立たないっていうかー」
「そんな使えるかどうか定かじゃない他所様の技術を真似るよりこっちの世界に合った新技術を開拓しないとダメよ。よそはよそ、ウチはウチね」
この痛烈な風刺……!
現実社会では何の取り柄もない平凡な主人公が、異世界に転移した途端借り物の技術や知識でちやほやされる話にウンザリしてたところにザバッと冷や水を浴びせられる。
とかく異世界転移ものは異世界の人々が主人公をアゲる馬鹿に描かれ過ぎだが、本作は突き抜けたギャグにして、欲望と人格を備え、その世界でちゃんと生きてる人間ならこんな思考を基にこんな行動をする、というロジックが毎回非常な説得力を持って伝わってくる。
一億総レビュアー社会と化したリアルと通じる要素も含み、人気レビューは瞬く間に拡散されて便乗犯が出るとか、ケンタウロスの輸送ギルドと組んで更に範囲を広げるとか、SNSのアレコレがフィードバックするデジャビュが楽しい。
レビューの最下部に新規店の一行紹介が載るなど、ポップアップ広告を思わせる。
















