安達茉莉子/社会福祉法人南山城学園『らせんの日々 ― 作家、福祉に出会う』は、作家・安達茉莉子が福祉の現場で人々と出会い、共に過ごした時間を綴ったエッセイ集です。障害のある人々との日常のやりとりを通して、「生きること」「働くこと」「表現すること」の意味を問い直します。福祉を「支援」ではなく「共に生きる関係」として描く筆致が温かく、文学と福祉の交差点から人間の尊厳を見つめ直す、静かな感動に満ちた一冊です。
「福祉に従事することは、多かれ少なかれ、“らせん”のようなものである」
数十年に渡り福祉の道に従事してきたひとりの職員が、福祉と「支援」について書き残した一文である。
障害者支援や高齢者福祉など多様な分野の事業所を運営する社会福祉法人、南山城学園。そこで著者が出会ったのは、この社会がより生きやすいものになっていくためのヒントに溢れた、“最先端”の風景だった。
素朴だが、やさしく、やわらかい空間。
丁寧かつ創意工夫に満ちた、細やかな支援。
データをとり、その分析によって得られたエビデンスに基づいた取り組み。
日々の実践をふりかえって研究し、言葉にすることを重視する活動。
答えのない、複雑な事柄について話し合うことができる空気。
利用者の生きがいに寄り添い、そのひとの人生に思いを巡らせることのできる想像力。
支援しつづけるために支え合う、職員どうしのフラットな関係性。
ーーそれらの根底に流れ、職員全体に浸透する「人を大事にする」という意識。
自分を取り巻く暮らしを少しずつ変えていくことで幸福へと近づいていく自らの軌跡を描いたベストセラー『私の生活改善運動 THIS IS MY LFE』。その著者・安達茉莉子が次に描くのは、誰もが人間らしく生きることができる世界を目指す「福祉」の現場。上から見れば、堂々めぐりのように見え、横から眺めれば後退しているようにも見える。でも、踏み出した一歩によって、わずかに、高みへと上がっている。そんな“らせん”のような日々を、福祉の現場ではたらく職員の語りを通して描いたエッセイ。
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