タイトルの『黒牢城』は"こくろうじょう"と読みます。
舞台は、戦国時代の有岡城。
織田家に謀反を起こした荒木村重が立てこもる城です。
物語の始まりは、事の無謀さを説くために訪れた織田方の軍師・黒田官兵衛を、村重が牢獄に幽閉してしまう…というところ。
そして官兵衛を幽閉している間に、城内では様々な難事件が勃発。
謎の解明に努める村重は、知恵者である官兵衛に謎を解くように求めていくのです。
あらすじだけを見ると簡単な構成のように見えますが、実際に読むとその重厚感に圧倒されます。
籠城する城方の空気が時を重ねるごとに暗いものになっていき、
それによって人心は乱れ、疑心暗鬼が生まれ、難事件も起きる……
この重たい雰囲気は、ぜひ読んで味わっていただきたいと思います。
史実とミステリーが上手く絡み合い、それぞれが見事に着地するラストがまた素晴らしいのです。
ちなみに、史実を知っていても知らなくても楽しめるのでご安心ください。
歴史小説を読み慣れていない方の場合、見慣れない言葉や漢字が多く出てくるかもしれません。
ですが、歴史用語はさりげなく説明が挟まれていますし、ルビも振ってあるのでその点も大丈夫だと思います。
なぜ村重は、使者としてやってきた官兵衛を生かしておくのか。
なぜ官兵衛は、村重の謎解きに協力をするのか。
そして、起きた事件の裏に隠されていたものとは何か。
最後まで目が離せない作品です。