「未来は過去にある」――この逆説的な言葉に、私は深く心を揺さぶられた。人生を変えるには新しい知識やスキルを得ることが必要だと思い込んでいた私にとって、「思い出すことが先」という本書の主張は、まるで忘れていた鍵を手渡されたような感覚だった。
著者・ひすいこたろう氏が息子ユータロー君との実際のやりとりを通じて描くエピソードは、どれも素朴でありながら、心の奥に眠っていた“純粋な自分”を呼び覚ましてくれる。ユータロー君が「今日が一番楽しかった」と言って毎日を更新していく姿は、結果や評価に縛られがちな大人の私に、「今を楽しむ力」の大切さを教えてくれた。
本書を読み進めるうちに、私自身の子ども時代の記憶が次々と蘇ってきた。無邪気に笑い、失敗を恐れず、ただ目の前の世界に夢中だった頃の自分。その記憶は、今の自分にとって「再起動のスイッチ」となり、心をゆるめ、軽やかにしてくれた。
「ゆるんだ人からうまくいく」という言葉も印象的だった。頑張ることが美徳とされる社会の中で、肩の力を抜くことは怠惰と誤解されがちだ。しかし本書は、心が柔らかくなることで、人生が自然と好転していくことを教えてくれる。
この本は、過去の自分と再会し、未来の自分を励ますための“心の旅”である。読後、私は「人生をやり直す」とは、何かを捨てることではなく、忘れていた大切なものを取り戻すことなのだと気づいた。











