「復讐していいのか」「罪を償うとは何か」という問いが物語の芯に据えられていて、読んでいてずっと胸がざわつきました。過去に人を死なせた者ばかりが狙われるという設定が、単なる連続殺人ではなく、読者自身の正義感まで試してくるように感じました。
ふっかログ
+1
ホテル・コルテシアという仮面を被る場所で、それぞれの事情を抱えた人たちが交錯していく様子は、シリーズらしい安定感がありつつも、今作は特に空気が重く、大人向けの苦さが強い印象です。新田と尚美のコンビも、事件の深刻さの中で小さなユーモアや信頼感をにじませてくれて、ほっとする瞬間がありました。
一方で、捜査側の暴走や倫理ギリギリの手法も描かれていて、「正義のためならどこまで許されるのか」という不穏さも残ります。そのグレーさが、読後にすっきりしないけれど目をそらせない、妙なリアリティとして心に残りました。
シリーズのお祭り感を楽しみつつも、今回はどこか「これで本当に良かったのか」と自分に問い返したくなる一冊でした。読み終えたあと、ホテルのロビーのざわめきと、そこに紛れる人々の秘密が、しばらく頭から離れませんでした。

















