現在三期放映中のサイコパスノベライズ。
二巻では弥生と宜野座に焦点があてられる。
本編を視聴している者の多くはさすがに気付いてるだろうが、弥生はレズビアンであり、同僚の志恩と関係を持っている。
彼女が主人公の話は親から子への支配、または組織間での差別の形で男性に搾取されるジェンダーの問題も扱っており興味深い。
これもノベライズを読まねばわからない情報だが、シビュラ社会では同性愛が禁じられておらず、相性さえ合えば同性との婚姻も推奨されている(霜月の幼馴染の二人も結婚推奨判定が出ており、それが霜月の嫉妬を招いた)
そんな価値観が定着しているので、同性愛者を差別し暴言を吐けば、逆に「時代遅れ」と軽蔑される。
シビュラの功罪は今後も物語の命題として論じられていくだろうが、歴史上弾圧されてきた性的マイノリティにとっては、こちらの方が断然生きやすく思える。
弥生と志恩と絆の強さがわかる話で、弥生の元恋人・リナが、印象的な悪役として再登場する。
本編で「思ってたのと違うな」と呟いた軽さとは一転、絶望を突き詰めてカリスマ性を獲得した聖女として描かれているのがキャラ違いすぎて違和感だが、短編としての完成度は高く余韻を残す。
未来は脆さと母性を兼ね備えた非常にいいキャラだと、同性の私は評価している。
「大人すぎる」という意見もあるが、それはシビュラ社会の弊害である閉ざされた環境に育ち、早く大人にならざるえなかった悲劇でもあると思った。
付け加えれば、弥生や志恩ほか一係のメンバーと出会った事で世界には信頼できる大人もいるのだと知り、短い期間で劇的に成長したと考えればさほど不自然でもない。
宜野座が主人公の話は、彼の繊細さや狡噛との関係が掘り下げられファン必読。
ドッグセラピストの資格を有している、犬をプレゼントしてくれた祖母がいるなどの情報は、ノベライズでしか得られない。
狡噛との出会いにも少し触れられているが、互いを対等に理解しあった二人の友情が爽やかで、当時の話を読みたくなる。
本編では故人の佐々山も、女好きでチャラい振る舞いに比して宜野座を諭すなど思慮深い一面を見せ非常に魅力的。さりげなく宜野座のぶんもコーヒーを持ってくる場面に気遣いがあらわれている。
事件の真相はシビュラ社会の歪みを抉り出す苦いもので、人間の醜悪さをこれでもかと突き付けられる。
終盤に正体を現した「彼」の口から語られる真相はショッキングで、読者の色相も濁る。
極寒の野山に放たれた「動物」たちが、あの環境で衰弱もせず病気にもならず数週間(ことによると数か月)生きられるものか?など疑問もあるが、クライマックスの執行シーンのカタルシスでこまかいことはどうでもよくなる。
本編では語られなかった部分を補完し、アレンジも加えた上でさらに六合塚弥生と宜野座伸元という人間を魅力的に肉付けしたノベライズなので、二人のファンなら買って損はない。











