ありがとう
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【いったいこの人のなにが特別だったのだろう】
理性やモラルなんて、何の歯止めにもならないのだろうか?孤独を抱えた人間には。男と女のもつ弱さと狡さが繊細かつ巧みに言語化された感情描写が光る一作。毒親育ち、鳴かず飛ばずの女優業、居場所とは感じられない夫、そんな背景をもつ主人公・沙良が心の拠り所にしたのは『憐憫』の情がわく謎めいた年上の男だった。素性の知れない相手だからこそ心を許せて特別な存在だと錯覚してしまう感情はわからなくもない。ふと正しさを裏切りたい時、私はつい島本理生作品を手にとってしまいたくなるなぁ。